2014年12月12日

鎖国の一端を感じる事ができる一冊の本

大学時代僕は海外旅行研究会、略して海研というサークルに所属していた。
海外に憧れミーハー気取りでそのサークルに入ったわけではなかった。
その頃から今のような保守的思想にどっぷり浸かっていたわけではなかったが少しずつ固まりはじめていた。

でも海研に入ってたじゃん!矛盾してない?

音楽で洋楽を聞く人が理解できなかった。英ペラの人が聞くのはわかるよ。言葉聞き取れるわけもなく増してや意味もわかんないのに洋楽しか聞かないとかいう人がかっこわるくさえ思えた。

そんな中、『今の日本の音楽は欧米の影響を受けて今の姿になっている』と言われてハッとしたことがあった。

いわゆる自分が聞いている邦楽と言われるものは嫌っている洋楽がなければ存在してないのは事実だった。
だいぶ自分も視野が狭いなと恥ずかしく思った。僕は日本を知るために海外のことを学ぶ必要があると海研に入った。
まぁそれから月日は随分流れて先日、御番所の勉強をしようと江戸時代の貿易に通じる小説を読んだ。

辻邦生著『天草の雅歌』という本だ。
この本は江戸初期の糸割符制度時代(御番所記事参照)を舞台に長崎奉行勤めの通辞(通訳)役とポルトガル人とのハーフ女性コルネリアの間に起こる恋愛小説。

この中にこういう一節がある。

『国内に居すわって交易するだけで利益を追っていたら,最後には,自分自身の首をしめることになる。
日本は異国のあいだに立って孤立してしまい,天竺やエウロッパや安南やジャガタラとともに生きてゆくことができなくなってしまう。そうなれば、私たちは世界のなかで物を考えたり感じたりできなくなってしまう。
よかれ悪しかれ日本のことだけしかわからなくなり、盲目となり、井の中の蛙となり、傲慢になり、無知になる。
私はそのことをおそれる。異国交易というのはたしかに物品の流通だ。しかしそれ以上に知識や感じ方や考え方の相違を教え、私たちを狭隘な独善から救い出してくれる』

保守になりすぎて海外に遅れをとるか、開国して日本文化を薄めていくのか当時の日本でも国内を二分する大きな案件だったことはどちらの意見も痛いほど理解できる。

日本の歴史で見ればぎりぎりまで日本は保守的鎖国にこだわった。外的圧力に屈し開国をすることになったのは良かったのか悪かったのかそれはどの観点から見るのかで判断はわかれるでしょう。未だに答えは出ない。

この小説自体の話にもどりますと、恋愛小説としても僕の好みで当初の外国人に感情移入できるのかなぁなんていう不安を持って読み始めたのですがそのページを捲る手は止まらず一気に読み終えました。

コルネリアがそれはもう魅力的にえがいてあります。日本人ではないが上に弾圧などの苦労をしますが大和撫子のような相手を立てる気構えがあり通辞役を一途に思う気持ちは清々しく美しかった。

題名に天草の雅歌とありますが舞台は長崎です。
弾圧を逃れるため一時避難したりする場所で天草が登場する。愛しあう二人が離れ離れになることが多かった為切なさが増し天草を美しく描いてくれた。
後に辻邦生先生は解読で『天草の海の色は素晴らしい』と書いていらっしゃったので実際天草の海を見ながら思いを馳せこの小説を残してくれたんだなと感じました。

当時の江戸幕府体制の貿易の仕組みやそこにまつわる時代背景などわかりやすく書いてあります。
この海外貿易が日本にとってどても重要でだからこそいろんな人々の思惑があって揺れる。そんな面白い時代の天草遠見番所、そして牛深御番所。みなさんもこの小説を読んで頂きたく思いますのであらすじは書きませんでした。ってでも、みなさんもう読んでるに決まってんじゃん!って言われますよね!w

ちなみに牛深も2度ほどだったかな!?登場してます。大丈夫!作品中に出てくるということはちゃんと重要だったっていう証拠ですよ!


この小説のクライマックスは最後の最後で、それまでためにためてた涙を一気に流すことが出来ます。大号泣(TдT)ですよ。とてもスッキリする素晴らしい作品でございました。

最後に私が勝手に書き込むこの本の評定はA+(最高ランク)と書いて本を閉じました。

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こんにちわ!
はじめましての人ははじめまして!

来週牛深に帰ります。
天草を描くに出品予定です。牛深滞在中その他にも予定が詰まりすぎて全部うまく行くかな?って楽しみです。

お会いする方々お手柔らかにお願いしますm(__)m

近々牛深の事でもまた新しく嬉しいお知らせができると思います。それはまた正式発表後にでも!


  
タグ :天草の雅歌


Posted by hirok○ at 21:19Comments(2)牛深御番所